朱雀七星士BD140SS企画
投稿SS
「朱雀七星士BD140SS企画」(http://nanos.jp/suzakubdkikaku/)に投稿したものです。
【柳宿】
可憐に凛々と、それでも男らしくある。
なんていうのは嘘。
本当は性別なんてどうだっていい。
大事なのは私がどういうニンゲンなのかってことだけ。
それを表現できれば十分なんです、と言うと陛下は「十分以上だよ」と笑んだ。
仲間達が私を私らしくしてくれる。
胸に刻まれた誇りの証がとても愛しかった。
【張宿】
広い背中。軽々と僕を背負い、走る。力強く。
――貴方は強い。
いつも先頭を切って闘う。魁を誰にも譲らない。
――僕には何が出来る?
後方支援。戦略知略謀略。大切な人達を護る能力。
――いつかは貴方のように。
戦場を駆けながら己が能力を発揮出来るように。
――僕も七星士なのだから。
だから、前へ。
【星宿】
国を想えばこそ、民を想えばこそ。
正しさを求めて彷徨えば政の罠に陥る。
道筋とは、幸福とは何なのか。
大切な人を己が手で守りきる。その生き様に男として、人間として憧憬を抱く。
生まれを嘆くつもりはない。誇りはいつも胸にある、首筋に浮かぶ字と共に。
「私は、帝だ」
ならば、歩もう。
誠意と共に。
【翼宿】
何年経っても忘れられないものがある。
宿星の下に集った仲間達との記憶。
至t山とはまた違う自分の居場所。
あの頃と変わらない空を見上げながら酒を仰ぐ。
皆元気にやっとるやろかと呟くと、横に居た仲間が君は案外心配性なのだねと笑った。
煩い、と寝転がる。
永久の居場所は、相も変わらず此処にある。
【翼宿2】
太陽みたいに眩しくて炎のように熱い。
我が親愛の対象。
否、そんな言葉では足りない。
「何にやにやしとんねん」
「いや。お前に会えて良かったと思うて」
暫しの沈黙の後「お、おう」と頭は頷いた。
俺は笑って尋ねる。
「今日は何しよか?」
賊退治やって宴会やって何やってやったるで。
お前と一緒に、な。
【軫宿】
失くしたものが多すぎた。
親族、家族、そして誰よりも大切だった人。
また失くすくらいならと独りを選んだ。
能力や字に何の意義があるのか。
解らなかった自分を変えてくれた仲間達。
未だ守れないものは多いけれど己に失望するのはもうやめた。
荒んだ心を治癒してくれた皆の為に、俺も彼らの心を守ろう。
【美朱】
空を見上げると思い出す、あの人が言ってくれた言葉。
真昼でも私は見守られている。いつも、大切な人達に。
「美朱、どうした」
「うん。あたし、やっぱりお兄さんみたいな人がタイプなんだなーって」
え?!と驚く彼の腕に抱き着く。
「また逢えたらいいね」
夜でも真昼でも夢の中でも、輝き続ける星達に。
【井宿】
何もかも捨てたふりをして、本当は、何もかも捨てられずにいた。
過去は消せない。時間は遡らない。
明日は来る。生きている限り。
「認めたら、簡単に崩れ落ちてしまいそうで」
そんな事を年下の仲間に打ち明けること自体が、既に。
それでも彼は大丈夫やろと笑う。
……君がそう言うなら、信じてみようか。
【井宿2】
例えばその面の皮をべりべりと剥いでそのまま何処かに投げ捨ててしまえたら。
「井宿はん、生まれてきて良かったですね」
「…だ?」
「『在る』っちゅうのは可能性やから。『無い』のは無限の苦しみですよ」
「…つまり?」
「おめでとうございます」
憎たらしく盃を翳す。
君は捻くれているなと狐は笑った。
【鬼宿】
もっと俺に力があったら誰も死なせずに済んだだろうか。
「オイラに聞くのだ?」
ごめん。他意はないんだ。ただお前ならはっきり言ってくれると思って。
「傲慢だよ」
お面を外した井宿が呟く。
家族を守れなかった鬼宿(おれ)。
何の力もない魏(おれ)。
過去の自分を乗り越えて、勝つ。
皆と、美朱の為に。